埼玉県小鹿野町
秩父の山の麓で、地域の養蜂家から買い取った蜂蜜を使うミード(蜂蜜酒)を作る女性がいる。自他共に認めるのんべい、ソ連出身の工藤エレナさんだ。なぜミードなのか? なぜ秩父なのか? 彼女がミード造りに励む、ディアレットフィールド醸造所を訪ねた。
最寄りのICから【E17】関越自動車道「花園IC」を下車
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「やばっ!」「すごっ!」「うまっ!」
物書きをしていながら、口をついて出てくるのはシンプル過ぎる言葉だった。埼玉県小鹿野町で造られている蜂蜜酒「ミード」を飲ませてもらった時の、僕のリアクションだ。
ワインの醸造所をワイナリーと呼ぶように、ミードを造るのはミーダリー。小鹿野町のミーダリーは、町の名前に英語をあてはめ、Deerlet(小鹿)とField(野)を組み合わせて、ディアレットフィールド醸造所という。
西武秩父駅から車で約45分。町なかを抜け、奥秩父と称される山間部に向かっていくと廃校がある。その体育館の一部を改装して、2021年にこの醸造所を立ち上げた工藤エレナさんも、僕の反応を見て「ほんと、やばいでしょ!」と大きな笑顔を見せた。
自他共に認める「のんべい」のエレナさんが2012年、23歳の時に初めて飲んで「なにこれ!」とその味に驚き、衝動的に「自分で造りたい!」と思ったのが、ミードだった。
ミードは蜂蜜と水に酵母を加えて造られるお酒で、一説にはローマ皇帝のカエサルやクレオパトラも飲んでいたとされ、「世界最古のお酒」と称される。ブドウの品種や栽培地によってワインの味が異なるように、ミードは蜂蜜の種類によって味が変わる。
エレナさんが一目惚れしたミードは福島県会津地方の喜多方にある峰の雪酒造場で造られたもので、ソ連生まれのエレナさんが「故郷」と呼ぶ会津若松市からほど近かった。