未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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ソ連出身・会津育ち「のんべい」が造った醸造所 水と蜂蜜で造るお酒「ミード」を秩父で醸す

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.279 |25 April 2025
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#5クラウドファンディングで大金を集められた理由

2012年の夏、一枚のポスターを見て訪ねてきたソ連生まれの大学生から、5年後、ミードでコラボしようと連絡が届く。その時、峰の雪酒造場の佐藤社長はどういうリアクションだったのだろう?

「何年か前にミードを飲んだ私が、戻ってくるわけですね。しかも、私は会津で育った人間なので、ものすごく喜んでくれました。しかも、当時はミードを輸入している人はいたけど、造っている人はほとんどいなかったから、師匠にとってはひとり仲間が増えたみたいなもので、一緒にミードを広めよう! という感じでしたね」

仕込み中のミードをチェックするエレナさん。

23歳の時から念願だった「お酒の仕事」に就いたエレナさんの動きは、猛烈に早かった。2017年秋、まずはミードの存在を知ってもらおうと、峰の雪酒造場と連名で初めてのクラウドファンディングを行った。国産林檎の蜂蜜を使ったミードを返礼品として用意し、50万円を目標金額に据えたところ、553人から414万5111円が寄せられた。

これに大きな手応えを得たエレナさんは、2018年に3回のクラウドファンディングを行い、計800万円を超える金額を集めた。なぜ日本で無名だったはずのミードのクラウドファンディングに、これだけの金額が集まったのだろう?

「ミードはギリシャ神話や北欧神話、ケルト神話にも登場しますし、ローマ皇帝のカエサルやクレオパトラ、イギリスのエリザベス1世も飲んでいたと言われています。神話や歴史ってよくゲームに使われていて、そのなかにミードが登場するんですよ。さらに、『ハリーポッター』『ロード・オブ・ザ・リング』、20世紀にアメリカで創作されて、TRPG(テーブルゲームの一種)として世界的に人気の『クトゥルフ神話』にも出てきます。夫や私が働いていたIT業界にはサブカル好きが多いので、アニメ、ゲーム、ファンタジーが好きな人の間でミードの知名度が高いことを知っていました」

エレナさんは、クラウドファンディングで神話とミードの関係を前面に押し出した。さらに、クラウドファンディングの情報がサブカルファンに届くよう、ITのスキルを駆使した。それが、4回のクラウドファンディングで1200万円を超える金額につながったのだ。クラウドファンディングはその後も、エレナさんの活動をサポートする柱となる。

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

水と蜂蜜で造るお酒「ミード」を秩父で醸す

最寄りのICから【E17】関越自動車道「花園IC」を下車
1日目
ディアレットフィールド醸造所でミード醸造体験(要問合せ)。夜は、工藤夫妻が秩父駅前に開いた「秩父令和商会」でミードや地域のお酒を楽しむ。
ディアレットフィールド醸造所
秩父令和商会
2日目
小鹿野町はクライミングにも力を入れている。屋内クライミング施設のクライミングパーク神怡舘で汗を流す。
クライミングパーク神怡舘

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。