ヤギのチーズで勝負しようと決めた堀さんは、丸2年で修行を終え、2018年6月に帰京。すぐに土地探しに着手し、同時進行で東京・八王子にある磯沼ミルクファームでの研修がスタートした。東京で新規就農するためには、現場で2年間の研修を受けなくてはいけないのだ。
磯沼ミルクファームは牛の牧場だったので、堀さんはオーナーの許可を得て、牧場の一角に小屋を建てて妊娠した雌ヤギを一頭、飼い始めた。ミーちゃんと名付けたヤギは次の春、双子の雌ヤギ(イソちゃん、ヌマちゃん)を生んだ。
子どもを産むと、乳が出る。磯沼牧場にはヨーグルトを作る施設があるので、そこを使わせてもらい、初めてヤギのチーズ「シェーブルチーズ」を作った。それは、牛の乳を使ったチーズを作る時とは異なる感覚だったと振り返る。
「ミルクの雰囲気が違うんですよ。人から聞いた話で、自分でやってもそう感じるんですけど、牛より繊細だと思います。牛に比べて脂肪の粒が細かいんですよね。その分、チーズにした時の反応が繊細だと思います」
ミーちゃんの乳を使ったシェーブルチーズを磯沼牧場の人たちに食べてもらったところ高評価を得て、牧場に併設のショップで販売させてもらった。それを手に取ったお客さんの反応も良く、堀さんは自信を得た。
土地探しも、順調だった。故郷のあきる野市は自然豊かで、山も多く、土地勘もある。当初から地元で土地を見つけられるかもしれないと思って問い合わせていたら、北海道から戻ってすぐの2018年9月頃には現在の養沢ヤギ牧場がある約1ヘクタールの土地と建物を紹介された。研修があるためすぐには借りられなかったが、月々1万円を支払う形で仮予約した。
「近隣ともいい感じに離れているし、家の裏に小屋があって、それをチーズ工房にすれば放牧場と住まいと職場が一カ所にまとまるので、すごく便利だと思いました」