未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
172

『旅の思い出』編 雨の奥多摩も悪くない 5歳、はじめての山道をいく!

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
未知の細道 No.172 |26 October 2020
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#3曇りのち雨って……!?

とんでもなく長い前置きになってしまったのだが、それこそが奥多摩に行った理由だった。メンバーは1年前と同じ、うちの家族3人とマユミさんの合わせて4人。
あの時見たあの場所で、今度は思いっきり楽しもう! そうマユミさんを誘うと「行きたーい!」という明るい返事だ。
よっしゃあ! キャンプするもよし、ハイキングするもよし、ラフティングするもよし。その日の気分でいろいろチャレンジしよう、ということで当日は、朝10時に奥多摩駅で待ち合わせをした。

ただひとつ心配なのは天気だった。
実は前日はひどい土砂降りで、その当日の天気予報も「曇り」。
うーん、曇りかあ。
一言で「曇り」といっても実にいろいろなバージョンがある。晴れ間が覗く「薄曇り」の日もあれば、雨が降り出しそうな分厚い雲がかかる日もある。
当日の朝目覚めると、見事な曇り空。そしてその曇りは、どうみても雨よりの曇りで、直感に頼るならいつ雨が降ってもおかしくなかった。
私は何度も天気予報をチェックしたが、やっぱり「曇り」。
朝起きた時点で雨が降っていたらやめよう。
マユミさんとはそう取り決めていたが、ゴー・サインである。

奥多摩までは、電車で約1時間半。本を読みながらふと気がつくと、車窓には無数の雨の筋が入っていた。え、天気予報が外れたってこと?

奥多摩駅が近づくにつれ、雨脚は無情なほど強くなっていった。私はまだ何もしていないのに疲労感を感じ、無を念じながら目を閉じた。そういえば、前日まで出張や仕事が忙しすぎて、睡眠不足気味だった。今日そんな私が求めたのはリラックスや余暇であって、雨の中の苦行ではないはずだ。
本当に出発してよかったのだろうか?
「ねー、どこに行くの?」
娘のナナオは、漫画『ドラえもん』を読む合間に、無邪気に目をクリクリさせて聞いてくる。
「奥多摩っていうところだよ。東京の端っこで、大きな川や森があるよ」
「そこで何をするの?」
「いい質問だねえ。ええと……」
 この雨の中ではいったい何ができるか全く検討もつかなかった。奥多摩はアウトドアの聖地で、水族館やショッピングモールなどインドア施設は皆無。そこで苦し紛れに「虫を探しに行こう」と答えた。 ヤバイぞ。こんなのリベンジじゃなくて、罰ゲームだよ……。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。