未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
172

『旅の思い出』編 雨の奥多摩も悪くない 5歳、はじめての山道をいく!

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
未知の細道 No.172 |26 October 2020
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#2奥多摩に戻るというリベンジ

どうやら中央自動車道でとんでもない大渋滞が発生し、それが首都高などにも影響を与えているようだった。おかげで出発してから立川に着いた時点で3時間が経過していた。
「時速10キロだよ!自転車より遅いってどういうこと!」
私は激しく文句をいい、娘のナナオは「ママ、トイレ行きたいよ」と泣きべそをかき、さらに友人のマユミさんは「大変です、さらに渋滞が伸びてるようです!」と報告。車中は阿鼻叫喚状態に突入である。

その日、車窓からみた奥多摩の川はエメラルドグリーンに輝いていた。

絶望と混乱のどん底に突き落とされた私たちは、こうなったらと一般道で突き進むというイバラの道を選び、青梅街道を秩父・奥多摩方面に向かった。気がつけば市街地ではなくなり、ウネウネした山道が続いたあとは、車窓には深い渓谷が織りなす美しい景色が広がった。
わあ、きれいだねー、と目を奪われた。
マユミさんも「釣りとかできそう。うわあ、きれい! 来てみたいー!」と目を輝かせる。ラフティング、トレッキング、バーベキューなど恐ろしく魅力的な言葉が頭をよぎる。車窓にちらちらと見え隠れする多摩川は太陽の光を浴びてエメラルドグリーンに輝いていた。

突如として、もうここでクルマを降りて川で遊びたいという激しい欲望にかられた。
ああ、もう小屋作業はいいか……あの川に飛び込みたい。そう言いかけたが、冷静に考えるとそうもいかなかった。その日は材木屋さんが外壁材を届けにくる日だったのだ。ああ、悔しいっ!

結局のところ、私たちは忍耐強くじりじりと山梨方面に進み続けた。結局到着したのは出発から6時間後。奥多摩の美しい風景だけが頭に焼き付いた。

その晩、私はダグラス・マッカーサーばりに誓った。

I shall return!

必ず奥多摩に戻ってこよう。そして、思い切っきりレジャーを楽しんで、今日のリベンジをするんだ!

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。