さて、これまでも何度も行ったことのある塩屋崎灯台周辺に、再び行ってみることにした。塩屋崎灯台は、日本の灯台50選にも選ばれ、映画のロケ地になったこともあるので、知っている人も多いだろう。
塩屋崎灯台を挟んで豊間海岸と薄磯海岸があるのだが、いわき湯本ICを降りて車を走らせると、灯台の手前に、まず豊間海岸が見えてきた。幼い頃、海水浴に訪れたこともある豊間海岸は、津波で大きな被害があり、たくさんの人が亡くなったところだ。景色はすっかり変わり、防潮堤が建設され、まだまだ海の近くでは大規模な工事がなされていた。
さらに車を進め、灯台のふもとの薄磯海岸で車を降りた。きれいな砂浜とともに、こちらにも真新しくて高い防潮堤が、北へ北へと伸びている。防潮堤の上から太平洋を眺めていると、下から小さな子供たちの声がする。砂浜に降りて遊んでいる家族がいたのであった。
実は私は、今年の6月にもここへ来たばかりだった。震災後に初めて薄磯海岸で海水浴が再開されるということで、いわきの知人に案内されて、現在の海岸がどんなふうになったのかを見にきたことがあったのだ。その時に初めて、海岸のそばに美空ひばりの像があることを知人から教えてもらった。像の解説を読むと、晩年に出した曲のイメージに塩屋崎が選ばれており、その関係で建てられたものらしい。像に近寄るとその曲が自動的に聞こえてくるので、ちょっとびっくりしたのだった。
私は美空ひばりの歌が好きなので、それをもう一度聴こうと思って、今回また、ここに立ち寄ったというわけだ。しかし、どういうわけか今日は像の前に立っても歌が流れてこない。説明をよく読んでみると、太陽光電池で動く機械なので、曇りの天気が続くと音が流れないこともある、と但し書きがしてある。
何度試しても歌わないひばりの像と、今にも雨が降り出しそうな夕方の薄磯海岸を見渡して、なるほどなあ、と思った。残念だけど天気ばかりは仕方ない。帽子をかぶってステッキを持っているひばりちゃんの像は、おそらく少女時代の姿なんだろう。静かな海辺にひとりできりでいるのは、ちょっとかわいそうな気もする。
また歌声を聞きに来ればいいか、と思って、暗くなった薄磯海岸を出発した。
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松本美枝子