廃線をトロッコのような乗り物で走ることができるスポットはいくつかあるものの、時速20キロ出るエンジン付きのトロッコで、往復10キロも運転できる場所はほかにない。しかも、トロッコ王国の成り立ちを知り、「日本一の赤字線」を走ると思うと、鉄道ファンでなくともテンションが上がる。
線路は1本しかないため、5キロほど行った地点でグルっと回転して戻ってくる仕組みになっている。先に進むトロッコと戻ってくるトロッコがすれ違うことができないので、普段は1時間おきに、一斉に発車して同時に戻ってくるのだが、僕が取材に行った日は、平日の午前中だったこともあり、お客さんはゼロ。ということで、ひとりでトロッコに乗り、いざ出発!
物は試しと、まずは思いっきりアクセルを踏んでみた。その途端、僕は「おおおおおお!」と声を上げていた。岩崎さんは「時速20キロ程度しか」と言っていたけど、いやいや、フルオープンに近い乗り物で20キロを出すと、風や景色の流れをダイレクトに感じるからか、意外なほどにスピーディー!
もしかすると、最初は「怖い」と感じる方もいるかもしれない。でも、すぐにそのスピードに慣れてくるし、線路のつなぎめを通過する際のガタン! ゴトン! という衝撃が思いのほか強くてそのリズムも心地よくなってくるから、ぜひアクセルのベタ踏みを試してみてほしい。
スタート地点から少しの間は開けた場所を進み、しばらくすると木立の間を抜けるコースに入ってくる。みずみずしい新緑がトンネルのようになっていて、そのなかをビューッンと走り抜けると、これがもう本当に爽快で、刺激の強い目薬を差した30年前の織田裕二のように、僕は「キターーーーッ!」と叫んでいた。
ヒャッヒャ言いながらトロッコを進めていくと、今度は川の上を走る鉄橋が! ここ、線路の脇に柵がないから、安定した北の大地から急に狭くて不安定なところを走っている感覚になって、スリルがある。こんなところを実際に電車が走っていたと考えたら、心臓が少しキュッとなりませんか?
しかも、鉄橋が定期的に表れるから、ヒャッホー&キュッが交互に訪れて、平地にいるのにジェットコースター感覚。これで、誰かに追われていると勝手に妄想を膨らませれば、気分はもうインディー・ジョーンズの冒険だ!