未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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『旅の思い出』編 蛙の大合唱を聴きながら 心許せる友と入った、山形の湯

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.171 |9 October 2020
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#6どこに行くか、より誰と行くか

蔵王温泉には入れなかったけれど、その夜、私たちは大満足でホテルに辿り着いた。その日宿泊したのは、市街地の駅前にあるビジネスホテル。小さい部屋にシングルベッドが2つ押し込まれた典型的な部屋を見て「昨日の宿とは、雲泥の差だな」と笑う。

夢のような「オトナの贅沢旅行」は、今は一泊で精一杯。そんな現実を思い知らされた私たちは前日までの宿を思い出し、「昨日はよかったね……」としょんぼり小さなベッドに入ったか。いやいや、私たちのテンションは最高潮だった。

東北限定のどん兵衛を買い込み、ビジネスホテルへ。

コンビニで買ってきていた、東北限定のどん兵衛「芋煮うどん味」を食べる。飛び跳ねても怒られないベッドの上でジャンプして、「なんて楽しい旅だろう」を笑い合った。何かおもしろいものがあるわけでもないビジネスホテルの一室で、私たちは夜遅くまではしゃいでいた。

結局、「オトナな旅をしよう」などと言っているうちは、まだ子どもなのだ。私たちは一生懸命に背伸びをしたけれど、やっぱりビジネスホテルも気楽で好きだった。トイレに立ち、ユニットバスのシャワーを覗くと、信じられない狭さ。豪華な旅もいいけれど、貧乏旅行に「おかえり」と言われたようだった。

ふたり旅はやっぱり楽しい。“どこに行くか”は、究極的には関係ない。銀山温泉のかけ流しの露天風呂でも、ビジネスホテルのシャワーでも。私たちはどこだって同じように楽しみはしゃぐことができるのだ。

「次の旅行は、どこにする?」「うーん、どこもいいなあ」

本屋にずらりと並ぶガイドブックを見ながら、相談する私たち。どこに行ったって楽しい旅になるのがわかるから、なかなか行き先が決められない。さて、次はどこへ行こうか。仕事や住む場所が変わったり、家族が増えたり。高校生の頃と環境は大きく変わっても、私たちはこれからもずっとふたり旅を続けていくだろう。

※未知の細道では、新型コロナウイルスの影響が収まるまで、ライター陣の過去の旅をつづるエッセイを掲載いたします。

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

蛙の大合唱を聴きながら・・・山形の湯の旅

最寄りのICから【E13】東北中央自動車道「東根北IC」を下車
1日目
銀山温泉は小さな温泉街だけど、散策しているとあっという間に時間が経ってしまうので、少し早めに到着するといい。宿に荷物を置かせてもらって、身軽になったら山の方まで散策してみよう。川沿いにある足湯も、非日常感があってオススメ。
銀山温泉
2日目
銀山温泉に連泊してのんびりするもよし、山形駅のほうまで出て、他の場所を観光するのも楽しい。山寺は登りきったときの達成感が最高のお土産!蔵王温泉に行くときは、営業時間とアクセスをよく調べてから向かおう!
蔵王温泉

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。