未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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『旅の思い出』編 あの道、この路、旅の未知 ホワイトアウトの小国町、ヨレヨレげっそり八ヶ岳

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.164 |25 June 2020
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#4まさかの当日ドタキャン

八ヶ岳山麓にある宿・草原屋の庭先から見える風景。まさに草原。

そもそもなぜ、僕がひとりで巨大なバンを運転することになったのか。

我が家はよく旅をするので、各地にお気に入りの宿がある。そのうちのひとつが、長野県の八ヶ岳山麓にある宿・草原屋。日本の伝統工法で建てられた木の香りがする母屋も素敵なんだけど、ここはなんといってもロケーションが最高なのだ。

宿の前に広大な草原が広がっていて、その周囲は森。そして、その先に見えるのは八ヶ岳。まるでヨーロッパの山荘に来たかのような別世界の風景が楽しめる。

一度、この宿に泊まってファンになった僕らファミリーは、友人たちに「みんなで泊まりに行かない?」と声をかけた。そこで「行きたい!」と手を挙げたのが、義理の妹を含む6名。ということで、当初は妻と娘を含む計8人で長野に向かう予定だった。

そして、いざ計画を立てようという段階で判明したのが、ほぼ全員免許を持っているのに、ほぼ全員ペーパードライバーということ。この人数なら普通、車2、3台で向かうところだけど、それが難しい。それなら全員乗れるバンを借りて一台で行こう!ということに決まった。この時点では、「俺も運転できる」という男の友人Pさんもメンバーにいたのだ。そのPさん、女性陣のひとりと付き合っていて、カップルで参加するはずだったのに……。

2016年8月28日、出発のその日。Pさんから「ごめん、いけない」という短い連絡。まさかの当日ドタキャン!?なにゆえ!?と思っていたら、彼女がサラリと言った。「昨日、ケンカしちゃったんだよね」。ワオ、なんてこったい!ふたりの痴話げんかによって、ドライバーが僕ひとりになってしまったのだ。Pさんとは「疲れたら交代しあおう」と言っていたのに、まさかのロンリー。でも仕方ない、もともと僕らはオンリーワン。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。