2010年に帰国後は、盛岡で暮らしながら、年に数回、ヨーロッパに買い付けに行くという生活を楽しんでいたが、そのうちに「海外で仕入れたものを日本で売る」ということに不自然さを感じるようになった。東日本大震災を機に、サステナビリティや循環型の暮らしを意識するようになり、東北にも素晴らしいものがいっぱいあるのだから、わざわざ外国までいかなくてもいいんじゃない? という疑問がわいたのだ。
これからどうしようかと思っていた2014年の夏、親せきが岩手に遊びに来るタイミングで、「日本の昔ながらの景色を見せたい」と遠野に行った。遠野と言えば馬の産地。友人から、毎年夏の間、馬が放牧されている荒川高原牧場を勧められて、そこに向かった。
ところがその日はあいにくの雨模様のうえに、牧場が広すぎて馬の姿が見えない。残念に思いながら「もう帰ろう」と話していたその瞬間、遠くから「ドドドドドドッ」という地響きが聞こえてきた。なにかと思ったら、馬の群れ。すごいスピードで、自分たちのほうに向かってくる。柵があっても逃げたくなるような迫力を目の当たりにして、阿部さんは直感的に思った。「馬ってすごい! 馬に携わる仕事がしたい」。
でも、乗馬もしたことがないし、当てもない。アンティーク販売の仕事を続けながらモヤモヤしていたところ、遠野で開催された木のシンポジウムに参加した際に、遠野で山から切り出した木材を馬で運ぶ昔ながらの「馬搬」をしている関係者と知り合った。それが縁で、翌年にフランスで開かれた馬の祭りで、岩手伝統の「チャグチャグ馬コ」を披露する際のコーディネーターを務めることになった。
未知の細道の旅に出かけよう!
馬駆ける草原から桃源郷の森へ 安比高原で馬と暮らし、生きる
予算の目安2万円
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