未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
142

馬駆ける草原から桃源郷の森へ 安比高原で馬と暮らし、生きる

文= 川内 イオ
写真= 川内 イオ
未知の細道 No.147 |10 October 2019
この記事をはじめから読む

#5馬との出会い

2010年に帰国後は、盛岡で暮らしながら、年に数回、ヨーロッパに買い付けに行くという生活を楽しんでいたが、そのうちに「海外で仕入れたものを日本で売る」ということに不自然さを感じるようになった。東日本大震災を機に、サステナビリティや循環型の暮らしを意識するようになり、東北にも素晴らしいものがいっぱいあるのだから、わざわざ外国までいかなくてもいいんじゃない? という疑問がわいたのだ。

これからどうしようかと思っていた2014年の夏、親せきが岩手に遊びに来るタイミングで、「日本の昔ながらの景色を見せたい」と遠野に行った。遠野と言えば馬の産地。友人から、毎年夏の間、馬が放牧されている荒川高原牧場を勧められて、そこに向かった。

ところがその日はあいにくの雨模様のうえに、牧場が広すぎて馬の姿が見えない。残念に思いながら「もう帰ろう」と話していたその瞬間、遠くから「ドドドドドドッ」という地響きが聞こえてきた。なにかと思ったら、馬の群れ。すごいスピードで、自分たちのほうに向かってくる。柵があっても逃げたくなるような迫力を目の当たりにして、阿部さんは直感的に思った。「馬ってすごい! 馬に携わる仕事がしたい」。

でも、乗馬もしたことがないし、当てもない。アンティーク販売の仕事を続けながらモヤモヤしていたところ、遠野で開催された木のシンポジウムに参加した際に、遠野で山から切り出した木材を馬で運ぶ昔ながらの「馬搬」をしている関係者と知り合った。それが縁で、翌年にフランスで開かれた馬の祭りで、岩手伝統の「チャグチャグ馬コ」を披露する際のコーディネーターを務めることになった。

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

馬駆ける草原から桃源郷の森へ 安比高原で馬と暮らし、生きる

予算の目安2万円

最寄りのICから【E4】東北自動車道「松尾八幡平IC」を下車
1日目
安比高原へ。阿部さんの指導の下、馬との触れ合い、乗馬体験を楽しむ。その後は「遊々の森」を散策。気持ちのいいもりのなかでひたすらリラックスする。
2日目
阿部さんの指導の下、安比高原とは別の場所で乗馬体験。その後、国の特別天然記念物「焼走り溶岩流」へ。江戸時代に岩手山が噴火した際に流れ出した溶岩が固まったエリアで、不思議な風景が広がる。

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。