さて再び付属園のライチョウ舎に戻る。
はたして、宮野さんが言ったとおり、ライチョウは奥側の壁から、小松菜がある手前のガラス窓の方へ移動してきていた。
宮野さんは、ちゃんとライチョウの行動パターンをわかっているのだ! と私は心の中で驚いていた。
今度はさっきとはうって変わって、展示室の中を動きまわり、餌の小松菜をつついている。小松菜を食べたかと思えば、私たちがいる手前のガラス窓に顔を向けて寄ってきたりする。ガラス越しとはいえ、人間が何人もいて気にならないのだろうか?
「日本のライチョウは、長い間、神の鳥として扱われていたこともあり、狩猟の対象となってきた外国のライチョウとは違って、人間を恐ろしいと思っていないんです。世界で最も人間に慣れているライチョウとも言われています」と宮野さん。
だからこんなに近づいてくるのか! ほとんど生物がいないような高い山の上に暮らし、孤高のイメージがあるライチョウだが、意外な一面が、不思議でもありかわいらしくも思えたのであった。
ライチョウは育ててみると野性味が強いところと、脆いところの二面性がある、と宮野さんは続けた。餌の配合や調理などは厳格に管理しているという。一方でライチョウの保護飼育事業では、やがて野生に返せるような、野性味の強い個体を育てるのが理想だ。
たとえば鳥類は最初に見たものを親と思う「すりこみ」という特性があるのだが、「ヒナに餌をやるときも、僕らを親だと思わせないようにするのが、なかなか難しいです」と宮野さんは言う。
そんな話をしている間にも、ライチョウを見ようと来館者が次々とライチョウ舎にやってくる。人々は初めて見るライチョウの姿に驚きの声をあげたり、かわいい、といっては写真を撮ったりしている。その度に宮野さんは、詳しく説明をするのであった。
未知の細道の旅に出かけよう!
大町で「山岳」を知る旅
予算の目安15.000円〜
※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。