未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
100

福島・宮城

東京から宮城までを結ぶ東日本の大動脈の一つ、常磐自動車道。震災を乗り越え、2015年に再び全線開通してから約二年半。東日本に住む多くの人にとっては身近かもしれない高速道路、常磐自動車道を北上しながら、初めて聞く音、素敵な音、そして懐かしい音を探しに行く旅、後編。

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
録音・編集= 白丸たくト
未知の細道 No.100 |25 October 2017
  • 名人
  • 伝説
  • 挑戦者
  • 穴場
茨城県小美玉市

#9ここが常磐自動車道だ

頭上を走る車の音を、高架の下で聞いた

 私は今、常磐自動車道の高架の下で、色づいた田んぼが広がる風景を眺めている。この風景を撮影しようと思って、車から降りてみたのだ。

 頭のはるか上の高速道路は、おそらく片側一車線の対面通行の部分だろうか。シューッ、シューッと自動車が通り過ぎる音が、高く長い橋脚を伝わって聞こえてくる。その響きはなんだか波の音にも似ていて、不思議に心地よくて、思わず立ち止まって聞き入ってしまった。車が通り過ぎる音とともに、足元からは秋の野原を彩る虫の声が聞こえ、少し遠くからは、きっと誰かが草を刈っているのだろう、草刈機が低く唸る音が重なっていく。

 ここは福島県浜通りの南にある町、広野町。常磐自動車道広野ICの近くだ。埼玉、千葉、茨城を抜け、そしてここ福島から宮城へと続く東日本の太平洋側の大動脈の一つである常磐自動車道は、JR常磐線や国道6号線と並行しながら、この広い地域に住む人々の移動と発展を担ってきた。
 そんな常磐自動車道の一部が使えなくなった期間があった。あの東日本大震災の影響である。この町にある広野ICから、この北にある富岡ICまでの常磐自動車道は、まさに二年前まで震災の影響により、通行止になっていたところだ。現在は全線開通している。

 2015年に常磐自動車道が再び全線開通してから、すでに二年半が経とうとしている。人々が南から北へ、北から南へと行き交うなかでの、普通の風景とはどんなものなのだろうか。そしてその風景の中に散りばめられた、人々の生活が奏でる音や、自然が作り出す音を聞いてみたい。その音を聞いて、そこにいる人々の暮らしや風景を想像したい。
 常磐自動車道を北上する旅、後編のスタートだ。


未知の細道 No.100

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

常磐自動車道を南北縦断!(福島・宮城編) 2泊3日

予算の目安3万5千円〜

1日目
いわき市 #10 打ち身の名湯、白米鉱泉・つるの湯へ。特に秘湯や湯治場に興味がある人にオススメ。(詳細 tel. 0246-64-7562)
塩屋崎灯台 #11 薄磯海岸などを散策。近くの小名浜港で、海の幸を楽しむのもオススメ。
2日目
相馬市 #13 相馬野馬追や民謡など歴史と文化のある街・相馬市を散策。
山元町・亘理町 #14 二つの町の郷土料理を食べ歩いてみよう。特に和風レストラン・田園の亘理店と山元店では、期間限定のはらこ飯(9月初旬〜12月中旬)や、ホッキ飯(12月中旬〜5月下旬)がオススメだ。
#15 鳥の海、吉田浜周辺の海岸を散策。
3日目
仙台市 #16 杜の都・仙台を散策。錦町公園や勾当台公園など、街中の公園巡りや、朝市でお土産を買うのもオススメ。

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。