高速道路のような巨大で無機質な構造物をテーマにした撮影は、自然の美しさを表現する風景写真とは異なり、どのように切りとったらいいのか迷ってしまうかもしれません。そこで鉄道写真をライフワークにしているプロカメラマン、大滝恭昌さんにインタビュー。前回の「高速道路のある風景」部門の入賞作品3点を例に、撮影の際に気をつけるべきポイントやテクニックを教えてもらいました。
通常は操作が簡単な「オート」で撮影している方が多いと思いますが、被写体に合わせてホワイトバランスや撮影モード(ピクチャーコントロール)を調節すると、写真の印象は大きく変わります。フィルムカメラにはないデジタルカメラならではの機能をもっと活用して、イメージ通りの写真を仕上げてみましょう。
高速道路が木々に覆われて、まちの風景に溶け込んでいる叙情感のある作品です。雲がいい表情を出していますよね。合間からきらびやかな夕日がのぞき、空が燃えているように見えます。さらに、その夕日が水田に映り込んでインパクトを生み出しています。稲が伸びる前、田んぼが水鏡になる時季にしか見られない風景。ドラマチックで素敵な作品です。
いわゆる観光地を撮影して、ありきたりなものになるか、印象的な作品になるかの違いは、自分なりのアングルを持っているかどうかです。つい被写体を真ん中に配置したくなりますが、位置や大きさを変えてみることも大切。主題を決めたら、主役が目立つようなバランスの良い構図を工夫しましょう。
左側でスマホを構えているのは親御さんでしょうか。子どもたちが誰もそちらを見ていないのが面白いですよね。そんな一瞬のシーンを切り取った撮影者の感性が素晴らしいです。一番小さなお子さんの頭の上にちょうど太陽を持ってきたフレーミングも上手です。ご家族の仲の良さが伝わる、ほのぼのとしたいい作品です。
被写体の正面から光が当たる「順光」に対し、光源が被写体の背後にある「逆光」、斜め後ろにある「半逆光」は、被写体が暗く写ってしまいがち。それでも露出(明るさ)を補正することで、立体的な写真に仕上げることが可能です。光を読んでコントロールできれば、陰影のある味わい深い写真になります。
高速道路と一般道がまるで大地に張り巡らされた血管のように見えます。相当高い場所からの撮影だと思いますが、よくこの撮影スポットを見つけましたね。ちょうど高速道路のジャンクションのループに光が当たり、神々しいイメージです。「天使の梯子」と呼ばれる光の筋が扇状に広がって海にも映り込んでいる。絶妙なタイミングで撮影された作品です。
スマホやコンデジには「グリッド」の設定があります。グリッド表示をオンにすると、画面に縦と横をそれぞれ3分割する補助線が出るので、このラインを意識して構図を決めましょう。縦・横のラインの交点に主役となる被写体を配置すると、安定感のある構図になります。
iPhoneの場合、フォーカスしたい部分を画面上でタップすると、太陽マークが表示されるので、明るさを調整してからシャッターボタンを押しましょう。Androidの場合は設定の「明るさ(EV補正)」、コンデジにも露出補正の機能が付いているはずなので、好みの明るさに調整しましょう。
広告写真スタジオfoto-f8代表。1964年釧路市生まれ。道立近代美術館の図録をはじめ、札幌ドームなど公共施設のオープンツール、北海道農政部の広報誌「confa」ほかの撮影を担当。写真教室の講師や「サッポロスマイルSNSフォトコンテスト」の審査員を務める傍ら、休日は「鉄道のある風景」をライフワークに作品づくりも行っている。APA(日本広告写真家協会)正会員。