撮影のポイント

撮影のポイント 撮影のポイント

プロのカメラマンが伝授!
高速道路の撮影テクニック

大滝恭昌 高速道路のような巨大で無機質な構造物をテーマにした撮影は、自然の美しさを表現する風景写真とは異なり、どのように切りとったらいいのか迷ってしまうかもしれません。そこで鉄道写真をライフワークにしているプロカメラマン、大滝恭昌さんにインタビュー。前回の「高速道路のある風景」部門の入賞作品3点を例に、撮影の際に気をつけるべきポイントやテクニックを教えてもらいました。

大滝恭昌

色を調整して、よりドラマティックな写真に 色を調整して、よりドラマティックな写真に

通常は操作が簡単な「オート」で撮影している方が多いと思いますが、被写体に合わせてホワイトバランスや撮影モード(ピクチャーコントロール)を調節すると、写真の印象は大きく変わります。フィルムカメラにはないデジタルカメラならではの機能をもっと活用して、イメージ通りの写真を仕上げてみましょう。

二度と同じ景色は撮れない
一期一会の作品
第10回 最優秀賞「夕暮れを横切って」
夕暮れを横切って
撮影場所: 道央道 深川IC~旭川鷹栖IC
カメラ設定: 絞り優先 1/250秒 F11 ISO400
二度と同じ景色は撮れない
一期一会の作品

高速道路が木々に覆われて、まちの風景に溶け込んでいる叙情感のある作品です。雲がいい表情を出していますよね。合間からきらびやかな夕日がのぞき、空が燃えているように見えます。さらに、その夕日が水田に映り込んでインパクトを生み出しています。稲が伸びる前、田んぼが水鏡になる時季にしか見られない風景。ドラマチックで素敵な作品です。

デジタルカメラには光源や天候にあわせて色を調整してくれる「ホワイトバランス(WB)」という機能が装備されています。夕景は「曇天モード」か「日陰モード」で撮影するとオレンジ色がより強調されます。早朝なら「晴天モード」にすると青色が強調され、ヌケ感のある写真に仕上がります。無機質に思える高速道路も色や明るさで大きくイメージが変わるので、いろいろな設定を試してみましょう。

アングルを変えて、バランスの良い構図をつくる アングルを変えて、バランスの良い構図をつくる

いわゆる観光地を撮影して、ありきたりなものになるか、印象的な作品になるかの違いは、自分なりのアングルを持っているかどうかです。つい被写体を真ん中に配置したくなりますが、位置や大きさを変えてみることも大切。主題を決めたら、主役が目立つようなバランスの良い構図を工夫しましょう。

家族の仲良さが伝わる
ほのぼのとした作品
第10回 優秀賞「撮るよー」
撮るよー
撮影場所: 道央道 有珠山SA
カメラ設定:絞り優先 1/1000秒 F8 ISO200
家族の仲良さが伝わる
ほのぼのとした作品

左側でスマホを構えているのは親御さんでしょうか。子どもたちが誰もそちらを見ていないのが面白いですよね。そんな一瞬のシーンを切り取った撮影者の感性が素晴らしいです。一番小さなお子さんの頭の上にちょうど太陽を持ってきたフレーミングも上手です。ご家族の仲の良さが伝わる、ほのぼのとしたいい作品です。

まず、高速道路がテーマのコンテストに人物を撮るという発想が斬新ですよね。高速道路が写ってなくても、PAでの休憩のひとときだと分かります。この写真は目線より少し下から撮影していますが、被写体が巨大な高速道路でも同じこと。下からあおると迫力が出るし、反対に上から見下ろすと造形の面白さが表現できます。画面の中に主役をどのサイズで収めるか、寄ったり引いたりしながら工夫してみてください。

光を読んで、コントロールする 光を読んで、コントロールする

被写体の正面から光が当たる「順光」に対し、光源が被写体の背後にある「逆光」、斜め後ろにある「半逆光」は、被写体が暗く写ってしまいがち。それでも露出(明るさ)を補正することで、立体的な写真に仕上げることが可能です。光を読んでコントロールできれば、陰影のある味わい深い写真になります。

高速道路を俯瞰する
撮影地の選定が秀逸
第10回 優秀賞「燃える夕陽に照らされる」
燃える夕陽に照らされる
撮影場所: 道央道 伊達IC~虻田洞爺湖IC
カメラ設定: ノーマルプログラム 1/160秒 F4.5 ISO100
高速道路を俯瞰する
撮影地の選定が秀逸

高速道路と一般道がまるで大地に張り巡らされた血管のように見えます。相当高い場所からの撮影だと思いますが、よくこの撮影スポットを見つけましたね。ちょうど高速道路のジャンクションのループに光が当たり、神々しいイメージです。「天使の梯子」と呼ばれる光の筋が扇状に広がって海にも映り込んでいる。絶妙なタイミングで撮影された作品です。

私が鉄道写真を撮るときは、地図アプリで鉄路のカーブを探して撮影ポイントを選定します。地図上に太陽の角度と方角を表示してくれる有料のスマホアプリを使えば、撮影に最適な時間や光の条件も割り出せます。「半逆光」や「逆光」の場合は一度撮影してみて、暗いなら露出補正をプラス側に、明るすぎるならマイナス側に調整すると、陰影のある写真に仕上がります。

スマホ・コンデジの撮影テクニック

「一眼レフがなくても、スマホやコンパクトカメラで素敵な写真が撮れますよ」と言う大滝カメラマン。上手に撮影する基本は、事前にレンズの汚れを拭き取ることと、ブレないように両手で構えて撮影すること。そのうえで次の2点を工夫して撮影してみましょう。

グリッドを表示して構図を意識する

グリッドを表示して構図を意識する スマホやコンデジには「グリッド」の設定があります。グリッド表示をオンにすると、画面に縦と横をそれぞれ3分割する補助線が出るので、このラインを意識して構図を決めましょう。縦・横のラインの交点に主役となる被写体を配置すると、安定感のある構図になります。 グリッドを表示して構図を意識する

画面を一度タッチして明るさを補正

画面を一度タッチして明るさを補正 iPhoneの場合、フォーカスしたい部分を画面上でタップすると、太陽マークが表示されるので、明るさを調整してからシャッターボタンを押しましょう。Androidの場合は設定の「明るさ(EV補正)」、コンデジにも露出補正の機能が付いているはずなので、好みの明るさに調整しましょう。 画面を一度タッチして明るさを補正

画面を一度タッチして明るさを補正
フォトグラファー
大滝恭昌Otaki Yasuyoshi
フォトグラファー
大滝恭昌Otaki Yasuyoshi

広告写真スタジオfoto-f8代表。1964年釧路市生まれ。道立近代美術館の図録をはじめ、札幌ドームなど公共施設のオープンツール、北海道農政部の広報誌「confa」ほかの撮影を担当。写真教室の講師や「サッポロスマイルSNSフォトコンテスト」の審査員を務める傍ら、休日は「鉄道のある風景」をライフワークに作品づくりも行っている。APA(日本広告写真家協会)正会員。

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