木村家はリンゴ、梨をメインにさくらんぼ、プラム、桃などを育てている果物農家さん。農家民泊のメンバーでもあり、これまで10ヵ国以上の観光客が宿泊しているという。
立派な一軒家の木村家に到着すると、敦子さんの旦那さんの律行(ただゆき)さん、長女の綾子さん、次女の知代さん、そして猫二匹が迎えてくれた。長男の理久(ただひさ)さんも遅れて合流。僕のような珍客を歓待してくれる一家だけあって、やっぱりとてもオープンでフレンドリーだった。
テーブルの上には、鍋とともにお寿司があって、内心「これは?」と思っていたら、綾子さんが「今日は“いい夫婦の日”だから、みんなでお祝いしようと思って、お寿司を買ってきたんです」とにこやかに教えてくれた。……確かに11月22日は、世の中的には鍋の日というより、いい夫婦の日だろう! なんという日に来てしまったのか! 僕は自分の浅はかさに呆れ、「家族団らんの日にすいません!!!」と謝ったら、「いいの、いいの、気にしないで! さあさあ、冷めないうちに食べましょう! 美味しいよ!」と敦子さん。
寄せ鍋が滲んで見えたのは湯気のせいか、それとも……。
木村家、そして南部町の尋常じゃないホスピタリティに胸を熱くしつつ、寄せ鍋をつつく。具材は白菜、ネギ、えのき、マイタケ、豆腐、イカ、笹かま。敦子さんが塩と酒と出汁で味付けしたさっぱり味だ。南部町の隣の八戸は、イカの水揚げ日本一。だから、鍋にもイカ! これがまた柔らかく煮られていて、だし汁と絡んで旨いのなんの! 笹かまも鍋では食べたことがなかったけど、肉厚でボリュームたっぷりで、これもまた旨し!
ホクホクしながら食べていたら、敦子さんが今度は「ひっつみ鍋」を出してくれた。ひっつみは青森南部の郷土料理で、練った小麦粉をひきちぎって入れることを“ひっつみ”と表現するそうだ。木村家のひっつみ鍋には、たくさんのネギとひっつみ、そしてサバの缶詰のサバが入っている。このサバ缶、旦那さんの律行さんが知人がもらったという八戸産の最高級品で、なんと一缶700円以上! このサバ、たんまりと脂がのっていて、鍋に旨みがじゅわーっと染み出ている。その旨みを十分に吸ったひっつみときたら!
僕は、「旨いっすね!」「やばいっすね!」と連発しながら、木村家のなべを堪能した。気づけば、冷ます意味でのフーフーに加えて、食べ過ぎてフーフーしていた。
未知の細道の旅に出かけよう!
南部町(2日間)
予算の目安 2万円~
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川内イオ