未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
69

旅するお百姓さん 日本にハーブを広めた男

旅するお百姓さん 日本にハーブを広めた男


茨城県取手市

「ハーブ専門のすごい農家がある」との噂を聞いて、はるばるやってきた取手市貝塚のとある農場。そこは噂にたがわず、一流の料理人たちが使いたがる作物が青々と茂る、日本有数のハーブの農場だった。世界中を旅してきた破天荒なお百姓さんの仕事ぶりと、美味しいハーブと野菜のお話。

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.69 |25 June 2016
  • 名人
  • 伝説
  • 挑戦者
  • 穴場
茨城県

最寄りのICから常磐自動車道「谷田部IC」を下車

常磐自動車道「谷田部IC」までを検索

最寄りのICから常磐自動車道「谷田部IC」を下車

常磐自動車道「谷田部IC」までを検索

#1ハーブの「すごい人」

私には弟がいる。ぱっと見、ふつうのサラリーマンであるが、彼には、あるこだわりがある。
それは人一倍、食べ物にうるさい、ということ。特に生鮮食品、もっと言うと、野菜と果物に。
その理由は簡単で、つまり農業の流通の仕事をしているからだ。美味しく安全な農産物を流通させるために、日夜、各地の生産地に、たまには外国までも出かけて、生産者、消費者だけでなく資材、肥料と農業の全てに関わるさまざまな人たちと共に仕事をしている。

その弟がある日、とても立派なハーブをたくさん持ち帰ったことがあった。
その中には、近所のスーパーでは見かけたことがない、ふさふさとしたフェンネル、ディルなどがたくさんあった。
ヨーロッパの市場なんかだと普通にあるが、私はそれまで日本では、こういう立派なハーブの束を見た覚えがなかった。
大きいだけではなく、香りもすごくよい。どうしたのさ、これ? と聞くと、仕事相手の生産者から、もらってきたのだという。

ヨーロッパの料理には欠かせないハーブ、フェンネル。

ハーブ専門のすごい農家さんなんだよ、と弟はいった。珍しいたくさんの種類のハーブがびっしり育っていて、お姉ちゃんなんか料理が好きだから、畑を見たら興奮しちゃうかもね。
「そしてハーブだけではなくて、そこの農場は野菜もすごく美味しい。野菜とハーブを使った、手作りのピクルスなどの6次産業も手がけている。とにかく日本の中でも有数の生産者なんだ、霜多さんは」と弟は私に詳しく教えてくれたのであった。

農業の仕事をしている弟がそこまでいうのだから、凄い人なのだろうな、いつか会ってみたいな。その日からずっと私はそう思っていたのであった。

このエントリーをはてなブックマークに追加


未知の細道 No.69

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。